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2001年の思い出 [映画]

僕が少年時代、科学館のプラネタリウムが好きだった。
ドームの中が星空になるのが、なんとも好きだった。
よく父親にせがんで、街の中心近くにある科学館に連れていってもらった。

1978年のその日、科学館は休館だった。
じゃぁ、映画でも見に行くかということになった。
僕は、『スター・ウォーズ』が見たい!と言った。
まだ見ていなかったのだ。

ところが、科学館の横には大きな映画の看板がたっていた。
そこには、宇宙に浮かぶ宇宙ステーションと宇宙船の絵が描かれ、
『2001年宇宙の旅』と書かれていた。
そして、看板には『スター・ウォーズ』のジョージ・ルーカスが、
究極的なSF映画だと絶賛するコメントが書かれていた。
『スター・ウォーズ』より凄い映画なのか、と僕はびっくりした。
これに行くか?と父親は言い、僕は、期待に胸を膨らませ、うんとうなずいた。

僕はそれまで、東映マンガ祭りを見に、小さな映画館にはいったことがあったが、
大きな映画館には入ったことがなかった。
(だから、それまでのベストワンは、『長靴をはいた猫 80日間世界一周』だった。)
そして、その日入った映画館は、とっても立派な映画館だった。
僕らが映画館に入った時、映画は上映の途中だったらしく、
父は休憩までロビーで待とうと言った。
『2001年宇宙の旅』は途中で休憩が入るのだ。

ロビーで待っている間、父は、この映画館は、
シネラマ方式で、いつも見ている映画館の映画とは違い、
まるで映画の中に入ったような感じとなるらしいと言った。

僕は、立体映画なんだろうか、と好奇心を感じて、ドアをこっそりと開けて、
中を覗いた。中は広大な暗闇で、その中を、宇宙船が飛んでいた。
そして、看板にあった、宇宙ステーションがまわっていた。
僕は、本物を見ているような錯角を覚えた。

僕は、早く中に入りたくなった。親をせかして、中に入った。
空いている席にすわった。大きなスクリーンに驚いた。
(後で知ったが、当時、東洋一の大きさだったらしい)

僕は、食い入るように画面を見つめた。驚きの映像の連続だった。
宇宙ステーションの中の彎曲した白い廊下にモダンな椅子。
地球を背景に電話。優雅な月への飛行。
月面。何かが発掘された。モノリスに触ろうとする人間。
突然、耳を突ん裂くような大きな信号音。
劇場が明るくなり、休憩となった。

ぼくは放心状態だった。
明るくなって見たスクリーンは、彎曲していた。
映写機は3台あって、右、真ん中、左をそれぞれ写していた。
これも後で知ったのだが、当時、普通の35mm映画何かは、2台の映写機を
交互に使うので休憩が不要だが、シネラマ方式は一度に3台の映写機を
使うので、フィルムの切れ目で、一度休憩を入れて、3台の映写機に
フィルムをセットするのだ。
3台の映写機から3つの光が、スクリーンを照らし出す。
これもワクワクする体験だった。

続きが始まった。
最初見たのと異なる、遠くまで行く宇宙船の中で、宇宙飛行士がぐるぐる走っている。
そして、HALという賢いコンピュータ。
宇宙飛行士とHALは、信頼で結ばれているようだったのに、何かが狂っていく。
息が詰まるような緊張感。HALの反乱。そして、HALの停止。
そこから、先は、何だか未知の体験だった。
言葉にならない衝撃的な映像体験。ここは宇宙のどこなんだろう。
耳に入るのは呼吸の音。
また、地球に戻ったのだろうか。それとも宇宙の果てなんだろうか。

興奮につつまれて、わけがわからないで映画は終わった。
何でも知っている父親も分からないようだった。
最初の方を見ていないから、分からないのかも知れない。
次ぎの回を見ることとなった。

本編上映前の映画のコマーシャルでは、
無気味なオーメン2のコマーシャルが印象に残っている。
特に、予告編に映っていたカラスの姿が。うなされそうだ。

そして、『2001年宇宙の旅』が始まる。
アフリカの猿の群れだ。バグみたいな動物と一緒に、岩場にいる。
なんだか、不思議な光景だ。そして、もっと不思議なことに、
モノリスがでてきた。
なぜ、モノリスがここにあるのだ?
そして、画面は、宇宙の場面に変わる。
最初に、ドアに隙間から見た宇宙船の場面だ。
驚きにつつまれながら、また月面の信号音の所まで見た。

家に帰る途中も、帰ってからも、僕は、ずっと『2001年宇宙の旅』のことを考え続けた。
その日から、夜、眠れなくなった。
夜の闇は、宇宙の果ての闇のようだった。
寝息は、宇宙を彷徨う宇宙飛行士の呼吸音だった。
不眠は1週間続き、そして幸運にもまた眠れるようになった。
しかし、『美しく青きドナウ』の曲を聞くと、僕はいつでも
宇宙に心が飛んでいくようになった。
だから、学校の掃除の時間に『美しく青きドナウ』が
いつもかかっていた時期は、掃除しながら友達と話していても、内心動揺していた。

2001年は、その時随分未来のことのように感じていたが、今では既に昔となった。
だけど、心の中の2001年は未だ未来にある。

2001年宇宙の旅

2001年宇宙の旅

  • 出版社/メーカー: ワーナー・ホーム・ビデオ
  • 発売日: 2005/04/22
  • メディア: DVD


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コメント 8

kenta-ok

HALは 一字ずらすと IBM
by kenta-ok (2005-09-25 18:21) 

miron

kenta-okさん、コメントありがとう。
そのネタ結構好きなんです。
それで、関連して、以下の記事を前に書きました。
http://blog.so-net.ne.jp/miron/2004-12-09
宜しかったら御覧下さい。
by miron (2005-09-25 19:09) 

Mercedes

私に取ってもある意味「スター・ウォーズ」の面白さを確認する為の材料として使うこの映画。
私の理解力では到底解き明かす事が出来ない映画ですが、私は単純に宇宙船やHALや音楽を楽しみました。
by Mercedes (2005-09-25 22:13) 

miron さん、こんばんは
「2001年宇宙の旅」を劇場で、ご覧になったとはうらやましいです。
僕は、TVで放映されたものを最初に見ました。これは名作ですので、DVDが出たとき、速攻で買いました。僕は、このような謎が謎を呼ぶような作品が好きです。正直なところ、「スター・ウォーズ」より、「2001年宇宙の旅」のほうが面白いと思います。記事らしい記事でなくて申しわかないのですが、2001つながりで、TBさせていただきますので、よろしくお願いします。
by (2005-09-25 23:31) 

papa007_

長靴をはいた猫 80日間世界一周 懐かしい〜〜!!
2001年〜は当時の実験的なSFXがいっぱい詰まっててそういう視点でも楽しめますよね。ドリフのコントにも展開されて行きましたが(笑)
by papa007_ (2005-09-26 02:54) 

seedsbook

私はSFが好きで良く見るほうですが、2001年宇宙の旅は私にとって輝く王座に位置している映画です。(笑)
今見てもすたれない。
ビデオデッキを昔人から貰って、真っ先に買ったのがこれ。DVDプレーヤーを買ってDVDも買いました。他にもいろいろ好きなSFありますが、これは外せないものです。
by seedsbook (2005-09-26 06:47) 

miron

☆Mercedesさんへ、Mercedesさんの『2001年宇宙の旅』の記事にそう書いてありましたね。
その時、リバイバル上映の年号教えて頂き、ありがとうございました。そうした取材(笑)により、何とか温めていたネタを書けました。多謝。
スター・ウォ−ズ EPIに2001年のスペースポッドが出てきたり、EP3にも2001年を彷佛させるシーンがあったりで、そうしたジョージ・ルーカスのリスペクトの姿勢と遊び心がたまらなく好きです。

☆lapis さんへ、多感な少年期に、シネラマ劇場でこの映画に出会えたことは、とても幸せなことだったと思います。科学館が休館だった偶然に感謝しています。
TVでは、TV朝日で淀川さんが解説していたのを見ました。(日曜ゴールデン洋画劇場だったけ) 私は、この映画を見るのが恐くて、結構勇気がいるので、その後たった1回見たことがあるだけです。 そして、最近やっとDVDプレーヤーを買ったので、第1号に2001年を買おうかと思っています。

☆長靴をはいた猫に目が行く所、さすがpapaさん!長靴は心のアニメ原点です。
2001年は、実験的な、体力勝負のSFXホント満載ですよね。
CGもいいんですが、私はこうした大仕掛けなSFXが大好きです。
ドリフのコントの2001年ネタは覚えていないですが、ドリフの舞台セットも凄かったですね。
江口寿史の『すすめ!パイレーツの表紙』にも2001年ネタあったと思う。楽しい時代でした。

☆seedsbookさんへ、輝く王座! イイですね。 正しくその通りの風格ある映画ですよね。
そして、2001年のDVD買おうと思って調べたら1500円で売っているんですね。何だか良い時代というか、ありがたみが無いというか。笑。

いっぱいコメントがあって、びっくりしました。
さすが2001年、力がありますね。
by miron (2005-09-26 21:48) 

miron

☆以下を追記しておきます。
私が『2001年宇宙の旅』を見た、映画館の情報は以下にあります。
http://www.geocities.co.jp/Hollywood-Cinema/2231/chunichi_cinerama_zukan.htm
なお、上記の中の写真は、多分シネラマサイズの設定になっていなくて、
シネラマ映画の時は、幕が全部開いて、
上下の黒い部分も含めて、全部スクリーンだった(高さ11m 横30m)
と記憶している。
by miron (2005-09-26 22:00) 

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