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3D [小話]

日曜日の朝、クラウス一家は、
いつもの様にテレビを見ながら食事をしていた。
テレビでは、3D映画や3Dテレビについての特集をしていた。
夫のクラウスと子供のクリスが、それを見ながら、
3Dすごい!とはしゃいでいるのが、
妻クラリスには、ちょっ気にさわった。
そして、昔の映画は3Dに負けない迫力があったのにと呟いた。
例に挙げた映画は、よりによって、いつもの八つ墓村だった。
「八つ墓村は凄かったんだから」
と、彼女は言った。
子供の頃、映画館にいとこと初めて二人で行って、
暗闇の中で観た映像がとても怖かった記憶が、
彼女の心に深く深く残っているのだ。
「鍾乳洞から双子のおばあさんが出てくる所なんか、怖かったよ。」
と、思い返した。
「双子のおばあさん?」とクリスが聞き返した。
「そう、双子のおばあさんが出てくるの」とクラリス。
「3Dメガネをかけると、おばあさんが一人になって、画面から飛び出してくるんだ!」
と、父親のクラウスがふざけて言った。
「うひひやぁ!」と、クリスが吹き出した。
画面から飛び出してくる老婆の姿を想像して、笑い転げた。
そんなクリスの姿は、どんな映像より生き生きしていた。
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