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夢で会えたから [小話]

ある日、中学の時の同級生から、
今度同窓会をやるんだけどと連絡があった。

それで、中学からの友人たちと、
一緒に行く約束を取り付けようとした。
ところが、一人の友達とは連絡が取れない。

その友達の家の電話も、携帯も通じるが、
いつも留守電だ。
留守電に、個人的にちょっと苦手とする
メッセージを吹き込んでも、音沙汰がない。

その友達とはここ数年、会ったり話たりしていない。
他の友達に聞いても、会っていないらしい。
彼に何かあったのだろうか?
この所、連絡をとっていなかったのが悔やまれる。

意を決して、昔よく遊びにいった家を訪ねる。
表札は変わっていないので安心する。
呼び鈴を押すが反応はない。
家の様子を観察する。カーテンは閉まっている。
家の裏に回り込むが、洗濯物は干していない。
にわか探偵には、住んでいるのか住んでいないのか
判断がつかない。

しばらくしてから、もう一度訪ねたが、同じだった。
時々電話もかけてみるが、いつも留守電。

昔は、家の電話をかけると、
すぐに本人か家族が出てくれて、
これから遊ぼと、簡単に伝えられた。

今は、インターネット、メール、
iPhone、アンドロイド携帯が、
身の回りに溢れていて、
魔法使いが杖を一振りするように簡単に、
電気の魔法で人と連絡が取れるはずなのに、
この友達には、なかなか連絡が取れない。
友達の身に何かあったのだろうか?

その夜、僕は夢を見る。
夢の中の場所と状況は覚えていない。
ただ、特別な場所ではなくて、
いつもの馴染みのある場所だった。
そこに、その友達が、
いつもと同じような笑顔で、
僕のことを待っていてくれて、
僕は、何だ元気にしているじゃないか
と安心する。
そして、幸せな気分に包まれる。

目が覚めて、夢のお告げじゃないけれど、
僕は友達が元気にしていると確信する。

数日後、電話が鳴った。
「電話くれたようで」と、懐かしくて、呑気で、
いい意味で、ちょっと憎たらしい声だ。
つい昨日も話したばかりのような感じになって答える。
「ああ、同窓会ね。」
そして、夢の中の笑顔を思い浮かべて
「今どうしている?」と聞く。

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3D [小話]

日曜日の朝、クラウス一家は、
いつもの様にテレビを見ながら食事をしていた。
テレビでは、3D映画や3Dテレビについての特集をしていた。
夫のクラウスと子供のクリスが、それを見ながら、
3Dすごい!とはしゃいでいるのが、
妻クラリスには、ちょっ気にさわった。
そして、昔の映画は3Dに負けない迫力があったのにと呟いた。
例に挙げた映画は、よりによって、いつもの八つ墓村だった。
「八つ墓村は凄かったんだから」
と、彼女は言った。
子供の頃、映画館にいとこと初めて二人で行って、
暗闇の中で観た映像がとても怖かった記憶が、
彼女の心に深く深く残っているのだ。
「鍾乳洞から双子のおばあさんが出てくる所なんか、怖かったよ。」
と、思い返した。
「双子のおばあさん?」とクリスが聞き返した。
「そう、双子のおばあさんが出てくるの」とクラリス。
「3Dメガネをかけると、おばあさんが一人になって、画面から飛び出してくるんだ!」
と、父親のクラウスがふざけて言った。
「うひひやぁ!」と、クリスが吹き出した。
画面から飛び出してくる老婆の姿を想像して、笑い転げた。
そんなクリスの姿は、どんな映像より生き生きしていた。
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くまのアングリーのおはなし [小話]

『公募ガイド』という雑誌で、
くまのアングリーのおはなしを募集していた。
この雑誌は、毎月、アングリーという名前の
可愛いいクマのイラストが表紙に描かれていて、
その表紙のイラストのおはなしを募集していた。

12月号の表紙を見た時に、ひとつのお話が浮かんできて、
すぐに書いて、応募してみた。
入選はしなかったけれど、
自分では面白いものが書けたような気がするので、
よろしければ読んでみてください。

    ↓その表紙のイラストはこれです。
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===================================================
笑門福来
===================================================
 僕の母は、ショービジネスの仕事をしていて、
いつも世界中を旅していた。
今日はモスクワ、来週はパリ、来月は東京で公演という具合だ。
そんな訳で母はめったに家に帰ることは無かった。
その上、僕には父がいなかった。
生きているのか死んでいるのかも知らなかった。
母は父について話してくれたことが無かったからだ。
何ひとつ。僕が15になるまでは。

 その年のクリスマス、母はめずらしく家にいた。
ロンドンでの公演がキャンセルになったのだ。
母と二人で食事をしていると、母がおもむろに話し始めた。
「アングリー、
 あなたには父親のことを話したことは無かったわね」
「聞いてはいけないことだと思ってた」
「そうね。思い出すのがつらかったから。
でも、あなたも大きくなったし、話しておかないといけないわ。
あなたの父親の名前は、シャオシャオ。
中国語で笑うという意味なの」

 僕は、あまりのことにあんぐりと口を大きく開けた。
そして一呼吸してから聞いた。
「中国のクマなの?」
「ジャイアント・パンダ。
 16年前、北京でのサーカスで共演したのが出会い。
 シャオシャオは白黒の毛だったから、
 あなたの茶色の毛は私に似たのね」
「どうして別れたの?」
「色々とね。食べ物の好みや生活習慣も合わなかったし、
 政治的なこともあった。
 でもね。アングリー、これだけは覚えていて。
 シャオシャオはとっても愉快なパンダだったわ。
 いつもニコニコして、とぼけていて、
 みんなを笑わせていた。
 彼といると温かくって幸せな気持ちになった。
 私はシャオシャオが大好きだった」

 そう言うと母はニッコリとほほえみ、緑色の包みを取り出した。
包みからは竹林の香りがする気がした。
中はあたたかいマフラーだった。

 僕はそのマフラーを今でも大事にしている。
雪が降って寒い日なんかにマフラーをして歩いていると、
未だ会ったことのない父親のことを思いうかべる。
今シャオシャオはどこにいて、何をしているのだろうと。

クラウス家の受難 [小話]

クラウスの息子クリスが発熱したのは、10月最初の土曜日のことだった。
その日の夕方、クリスはぐったりして、居間で寝転がっていた。
クリスは寝転びながら体温計を脇にはさんでいた。
そして、母クラリスに、「38度5分。」と伝えた。
驚いた母はクリスに聞くと、外で遊んでいた昼頃から頭が痛かったと言う。
母は、直ちにクリスを車に乗せ、休日診療所に連れて行った。
もしインフルエンザだったとしたら、少しでも早い段階で、
タミフルか、リレンザを処方してもらうことが大事なのだ。

固唾を呑んで待った、病院でのインフルエンザの検査結果は、陰性だった。
発症から6時間以内は、反応が出ないことがあるのだ。

病院で、医師は尋ねた。
「家族にインフルエンザの人はいますか?」「いません。」
「学校ではどうですか?」
「流行りはじめています。」と母が答える。
自分はインフルエンザではない、と固く信じるクリスが、それを否定する。
「ぼくのクラスにはいません。」
母があわてて補足する。
「同じクラスでは、昨日体調が悪くて、昼で帰った子がいます。
となりのクラスにインフルエンザで休んでいる子が1名います。」
クリスが補足する。「疑いがあるだけです。」

苦笑して医師が尋ねる。
「他に、インフルエンザ患者との感染は考えられますか?」
母は思い出す。
「中学生の兄がインフルエンザだった子の家に、遊びにいっています。」
クリスが否定する。
「1週間ちょっと前。その子の兄さんは直っていたし、部屋には入っていない。」
「1週間以上前ですか? 潜伏期間を考えると、そこでの感染の可能性は低いですね」
母はインフルエンザであると判定し薬をもらいたいし、
医師とクリスは、結託して、インフルエンザであることを否定していた。
「明日、熱が下がらなければ、また来て下さい。」と医師は結論を出し、
その日は、解熱剤と普通の風邪薬を処方してもらい、帰宅した。

その夜、クリスの症状はさらに悪化を続けた。
咳がひどくなり、翌日の日曜の朝には、熱は39度5分となった。
母は、病院に電話をし、クリスを再び病院へ連れて行った。

母は間違いなく、インフルエンザだ、と確信していた。
適切な薬を早く処方して欲しい。
しかし、医師は、再検査をためらっていた。
「病院では検査薬は不足していて、
可能性が低い患者の検査は止めたい。」という事情でもあるのか?
と母はいぶかる。

それでも母は、強く再検査を希望し、
押し通して再検査をすることとなった。

そして、今度のインフルエンザの検査結果は陽性だった。
医師は「季節性インフルエンザですね」と、伝えた。
新型かどうかの検査はされなかったが、
ついにインフルエンザの特効薬であるリレンザが処方された。

家に帰ってきたクリスに、クラウスは尋ねた。
「新型インフルエンザだった? 特効薬はもらえた?」
クリスは、かすれた声で否定した。
「季節性。」

クラウスは、病名がはっきりすることを好む特性がある。
病名がはっきりすれば、適切な処置をすることが可能となる。
しかし、何故、クリスは、頑なに新型を否定するのか?
クラウスは、仕事場で、同僚が新型インフルエンザにかかった時の
周りの対応を思い出す。

十分に休めば良いよ、という言葉の裏に、うつすなよとの思い。
そして、熱が下がり、十分な期間自宅待機して復帰した同僚に対しても、
感染を恐れ、最初はなるべく言葉を交わすのは避けようとしたりする。

大人ですらこうなのだ。
十分な知識を持たない子供の世界はさらに残酷かもしれない。

知人から聞く話では、公表する不都合を恐れ、
職場を病気で休んだ人は、
周りの人に対して普通の風邪であろうとするらしい。
周りは、怪しいなぁとおもいつつも、その只の風邪、
という言葉を信じようとする。
しかし、偽って、職場に早く復帰しすぎることで、
感染が広がるリスクがあり、これは望ましいことではない。

我々に必要なことは、正しい医学的知識による
冷静で、温かい対応なのだ。

クラウス家では、家族のものに感染しないよう、
クリスを一部屋に隔離し、十分に気をつけて看病にあたった。
そして、リレンザの効果もあったのか、
クリスの熱は発熱後3日後には平熱に下がった。

それから2日して、医師に治癒証明書をもらい、
今週末の連休もあったので、クリスは今日まで11日間自宅で過ごした。

明日の火曜日から、クリスは久しぶりに学校に行く。
休みの間に、クリスは友達から、クリスがいないとさみしい、とか、
早く良くなれよ、という手紙をもらっていた。
明日学校で、友達がクリスを温かく迎えてくれたら嬉しい、
とクラウスは思うのだった。
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鶏の夢 [小話]

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鶏の夢

一昨日見た夢は、久しぶりにエンターティメント性が高いものであった。
夢の中に、現実に存在する人がでてきますが、
当然のことですが、面識はありません。
夢の中のこと(人物、組織、作品)は、
現実のこととは無関係であることを、最初にお断りしておきます。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
クラウスは、有名なアニメーション・スタジオにいた。
大御所監督のアニメーション映画が作られるのを見学していた。

明暗がはっきりした絵柄で、郷愁を誘う風景が描かれていたが、
あの世の世界が色濃く映し出されていた。

そこへ、スズキ・プロデューサーがやってきて、
「クラウス君、ちょっと」と、机に手招きした。

いやな予感がするなぁと、
クラウスが椅子に座ると、開口一番切り出した。
「きみ、次の作品の監督をしてくれる?」
あっけにとられたクラウスが、
「ぼくは、素人ですよ!」と言うと、
「君は絵がかけるから、映画もつくれるよ。」
と、スズキ・プロデューサーは、いかにも簡単なことの様に言った。
そして、
「鶏を題材に作って。いいね。」と、
クラウスに言い渡した。

クラウスは、泣く泣く、
大御所監督の絵コンテを片手に、
大部屋の片隅で、ノートに作品の企画書を書き始めた。
鶏のスケッチを書いては、そのキャラクターが動き出すのを期待した。
鶏は、動いてはくれなかったが、
やがて、表情を浮かべて、
鶏が住む世界について語り始めた。
クラウスは、忘れないように、
急いでそれをノートに書きとめていった。

気がつくと、部屋の中はガランとしていた。
スズキ・プロデューサーがやってきて、
「一緒に帰ろう」といった。
部屋には、もう一人だけ監督が残っていた。
スズキ・プロデューサーは、監督にに一緒に帰ろうと誘い、
部屋の電気を消した。

クラウスは、スズキ・プロデューサーと、尊敬する監督と
三人で道を歩いていた。
道端に、古びたビルが建っていた。
ビルの根元の地面は、大きくくぼみ、鉄骨が地中深くまで、
むき出しになっていた。

尊敬する監督は、かがんで、ビルの根元を覗き見た。
クラウスも真似をして、ビルの根元を見ると、水がたまっていた。
水の中を魚が小さな群れをなして泳いでいた。

クラウスは、その光景も面白かったが、
それにもまして、隣で一心不乱に、鋭い眼光でその光景を眺める
監督の姿に圧倒された。
この監督は、こうした風景が本当に大好きなのである。

二人の横にやってきたスズキ・プロデューサーに、
クラウスは軽い話でもしようと、子供時代の思い出話を始めた。
「ぼくは、子供のころ、空き地で、秘密基地を作ったものです。
ある日、基地を作るために、棒で地面にぐるっと環を描きました。
すると、環の中に水が湧き出したのです。
大地は、水の上に浮いているのかなぁと、その時思いました。」

その時のスズキ・プロデューサーの反応は、
全くクラウスが予期していないものであった。
「君には、がっかりした。
 帰ろうと誘ったのは、そんな話を聞くためではない。
 企画はどうなっているんだ。何故、企画の話を一言もしないんだ!」

あわてたクラウス。
「企画は出来ています。説明するには、
 落ち着いて話ができる場所がいります。」
と、とっさに答えた。

「よし、この先に、監督の家がある。そこで話を聞こう。」
監督の家まで、三人は無言で歩いた。
昔友達とよく遊んだ様な、平屋の庶民的な家についた。
元気の良い、お婆さんがいて、
「おや、早いお帰りだね。」と出迎えた。
子供たちが、家の中を駆け回って遊んでいた。
何だか、スタジオで見た監督の作品の一コマのようだった。

「この部屋で打ち合わせるから、入ってこないでね。」
と、スズキ・プロデューサーは家の人たちに伝えた。
いよいよ、その時がきた。
クラウスは、ちゃぶ台をはさんで、
スズキ・プロデューサーと監督と向き合った。

クラウスは、ノートを取り出し、表紙をめくる。
書いていた時の充実感は覚えているのだが、
正直内容は忘れかけていた。まぁ、中を見れば思い出すだろう。
しかし、そこには、
クラウスの見覚えの無い言葉が書かれていた。

「大きな人、心、国」

はぁ? という感じだった。
これは、まずいんじゃないか、直感的にクラウスは思った。
このスタジオは、小さなコミュニティである。
大きな組織というものとは、対極にある。
大きな国をテーマにすることはできない。
それに、鶏は、どうしたんだ?

しかし、心とは別に、クラウスは、雄弁に語っていた。
「ジョージ・オーウェルの「動物農場」を
現在の視点で作り直したいのです。
鶏が主人公です。ソ連崩壊後の社会、
金融工学による資本主義経済の繁栄と崩壊、
個人主義と全体主義。国とは何か?
鶏は、その流れを見つめ、
新しい夜明けを告げるのです。」

雄弁に語りながら、
クラウスは、言葉が、心を離れて、
勝手に宙で踊っているのが判っていた。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

ここで夢が覚めました。
普段、心の中で抑圧しているものが、
夢の中では噴出するのでしょうか。

スズキ・プロデューサーのポッドキャストを、
よく聴いていたため、こんな夢を見たのかもしれません。
夢の中のスズキ・プロデューサーは怖かった。(笑)
そういえば、高畑監督が、月から帰って来たかぐや姫を
題材に映画を作っているそうです。楽しみです。

山小屋のミステリィ [小話]

山小屋の怪談という、有名な怪談がある。
(ミステリィ作家 森博嗣さんもお気に入りの話のようで、
MORI LOG ACADEMYにも、とりあげられたことがあります。)
だいたい、こんな話です。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
雪山で吹雪の中、4人の登山者が、山小屋に辿りつく。
山小屋の中は真っ暗で、とても寒い。
眠ってしまうのは危険だ。
そこで、4人は、一晩中起きておくために、
以下の様に、体を動かす工夫を考えた。

(1) 4人はそれぞれ、山小屋(ほぼ正方形)の4隅に移動して座る。
(2) まず、1人目が、壁沿いに歩いて、次の隅の人にタッチして座る。
(3) タッチされた人は、その次のコーナーへ向かって歩き、
  その次の隅の人にタッチして座る。

(3)を繰り返すことで、4人は、一晩中、歩いては、座る、
を繰り返し、朝を迎えることができた。
下山する途中、1人がきづく。
「おかしいぞ。4人以外に、誰かいた?」

4人以外にもう1人いないと、
4隅を使って、ぐるぐる周り続けるリレーはできないのである。
従って、山小屋で死んだ幽霊などが、もう1人いたことなる、
という怪談である。 (ちょっと難しい?)
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

ここからは、僕のオリジナルでお楽しみ下さい。

さて、トリックを使えば、架空の1人は必要ありません。
そして、これは怪談ではなく、ミステリィだと考えることができます。

つまり、他のメンバーを怖がらせた愉快犯が、
この4人の中にいるということになります。(おぉ!)

そのトリックが可能なのは、ずばり4人の内の2人だけです。
それは、最初に歩き出した1人(1番目の人)か、
4番目に歩き出した人です。

最初に歩き出した人は、2番目の人にタッチして座り、
2番目の人が歩き出したのを確認した後、そっと立ち上がり、
最初の隅に戻って、なにげなく座ります。
次の周で、4番目の人にタッチされたら、次の隅に行くフリをしながら、
実際は部屋を対角線に横切り、
2番目の人にタッチしてから1つ前の隅に戻るという
最初と同じ動作を繰り返します。
これにより、他の3人には知られずに、
リレーを繰り返すことが可能です。

これと同じように、4番目の人も対角線に歩いて、
タッチした後、1つ前の隅に戻ることで、
他の3人には知られずに、リレーを繰り返すことが可能です。

2番目と3番目の人は、他に気づかれないようにするのは、
ちょっと難しい。(また、新たなトリックがあれば別ですが。。)

この容疑者、1番目の人か4番目の人の内、
犯人はどちらでしょうか?

このリレーを提案した人が一番疑わしいでしょうね。
(しかし、4人でこのリレーができると考えた他の3人も
問題だと思いますが。。)

誰も気づいてくれないと、愉快犯の意味がないので、
「おかしいぞ。4人以外に、誰かいた?」
と言った人も怪しいですね。

「このリレーを提案した人」と「おかしいぞ、と気づいた人」
が同一で、かつ、1番目か4番目の人であれば、
かなりの確度で、その人が犯人だと考えられます。

ということを、山小屋の夜に、怪談替わりに話すと、
皆、眠っちゃうんだろうなぁ。

サンタからの伝言 [小話]

これは、僕が子供の頃の不景気な年のクリスマスの話。

いつもの年だと、クリスマスが近づくと、
今年のサンタクロースのプレゼントは何だろう?
と、期待に胸を膨らますのだが、
その年は、今年はあまり期待はできないなぁと、
子供心に、分別のある判断をしていた。
いつもなら、サンタさんに何を頼むのか、
母さんに、さりげなく尋ねられたりするのだけれど、
その年は何も聞かれなかったからだ。

1週間ぐらい前になると、
母さんが、下駄箱の上に作りつけた物置から、
クリスマスツリーの入った箱を取り出してきて、
一緒に飾りつけをした。
枝を広げ、綿の雪を載せて、
天使や雪だるまやステッキのモールを取り付け、
ツリーの頭に金色に輝く星の飾りをつけた。
最後に、点滅をする小さな電飾を枝に巡らせて完成だった。
クリスマスツリーを居間に飾ると、気分は一気にクリスマスだった。

クリスマスイブの日、
いつもの年だと、母さんは、昼のあいだに、クリームを泡立て、
イチゴを沢山盛り付けたクリスマスケーキを作るのだけれど、
その年は、ケーキを作らなかった。

夕方になって、いつもより早く、父さんが仕事から帰ってきた。
手には、箱を持っていた。
「なに? その箱?」と僕は聞いた。
「今そこで、サンタクロースに逢ったんだ。
今年は行けないから、代わりに子供に渡してくれって。」
と、父さんが箱を手渡した。

「え?」っと僕は驚いて、
父さんがサンタクロースに会っている光景を想像した。
白い髭を生やした赤い服を着て、
赤い帽子をかぶったサンタのおじさんが、
近所の道端で、父さんを呼びとめて、箱を渡している様子を。

箱の中は、クリスマス・ケーキだった。
母のケーキとはちょっと違って、イチゴは少ないけど、
代わりに、チョコレートで作られた小屋と、
ちょっと、とぼけた顔のサンタクロースのロウソクがのっていた。

父さんが、サンタクロースに出会ったと僕に伝えたことの驚きは、
色々な意味で、今でもはっきりと覚えている。
クリスマスツリーと、サンタからプレゼントされたケーキがあって
部屋はとっても暖かだった。

それから、何年かして、
『大草原の小さな家』で、同じようなエピソードが出てきた。
(プレゼントを渡すように頼まれたのは、
正確には、父さんではなくて、
エドワードおじさんだったかも知れないけれど。)

世の中は景気が悪かったり、大雪が降ったりで、
サンタクロースは、来られない年だってある。
そんな時は、サンタクロースは、どうやら大人たちに、
今年は行けないという旨の伝言を伝えるようだ。
そして、子供は、驚きを持ってそれを受け止める力がある。
毎年じゃなければね。

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タイムマシンの様な夢 [小話]

その景色は、アメリカの片田舎のどこかのキャンパスだった。
僕は、そのキャンパスでバスケットボールをしていた。
70年代ファッションのオヤジたちが、5人ぐらいやって来て、
「どこかコンサートができる場所はないか?」と聞いてきた。
「あそこのホールを使えば」と、僕は、古びたホールを指し示した。

彼らの、その全身から漂うレトロな雰囲気から
きっとタイムマシンで過去からやってきたに違いない、
と僕はそう確信していた。

知らぬ間に、僕は、オヤジたちと、薄暗いホールの中にいた。
舞台には、少年マイケル・ジャクソンがいた。
近づき難い厳しさで、歌のリハーサルをしていた。

少年マイケルの孤高さとは別に、
スタッフのオヤジたちは、どうしようもない程、フランクだった。
多分アルコールなんかも入って酔っ払っていた。

「今は2008年なんだよ」と、僕はオヤジたちに教えた。

「レコードは無くなり、CDというパッケージになった。
その、CDも消えようとして、iPodという箱で何千曲も運ばれているんだ。」
僕の言うことは、彼らには良く分からないようだった。

「どんな音楽が、はやっているんだ?」
と聞かれて、iPodをポケットに入れていたのを思い出した。

「こんな曲さ」と、僕はiPodを取り出すと、
適当な曲を聞かせた。
リハーサルを続ける少年マイケルをよそに、
スタッフのオヤジたちは、驚いて聞き入っている。

それを見ているうちに、僕はあることを思い出した。
「マイケル・ジャクソンの曲も入っているんだぜ。」
画面をスクロールして、マイケルの曲を探すが、
何故か、1曲も出てこない。。
いつの間にか、マイケルの曲は消去されていた。

何か無いかと思って探していると、
YouTobeで落としてきた、芋洗坂係長のBeat It が突然出てきた。
http://jp.youtube.com/watch?v=IIZrca3lOVs&feature=related

無性に恥ずかしく、とっとと別の曲に変えようとしたが、
なかなか上手くいかない。
ところが、何故か、スタッフのオヤジたちは、
真剣なまなざしで芋洗坂係長のダンスを見ている。
ダンサーのオヤジが、「このステップは面白い。」と、
紙にダンスのスケッチを書いていた。。

場面は変り、僕は家の前にいた。
少年時代に住んでいた家だった。懐かしい。
そこに郵便配達員が、赤色の自転車でやってきて、
僕にハガキを渡した。
ハガキのあて先は、「少年miron」と書かれていた。
裏は真っ白だった。何だこのハガキ? イタズラか?
僕は、変った切手に気付く。
そこには、大きく「心回収」という漢字が書かれていた。
その漢字を眺めているうちに、
僕の心は、切手に吸い込まれていった。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

ここで夢が覚めました。
Back to the Futureの様な、楽しい夢でした。
冷静になって、夢の構図を考えてみると、
タイムスリップしていたのは、スタッフのオヤジたちではなく、
僕の方だったという落ちだった様です。
しかし、まどろみの中で、一瞬、
マイケルジャクソンのルーツは、芋洗坂係長だったのか?
と考えてしまったのが、バカバカしかったです。


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パンの消滅 (The missing bread) [小話]

前回に引き続き、森博嗣さんの本を読んでいる。
『幻惑 の 死 と 使途』と、『有限 と 微小 の パン』を読了。
どちらもとても面白かった。
そういえば、少し前にTVでやっていた、
三谷幸喜さんの『古畑中学生』もなかなか面白かった。
と、いうことで、今回も、ちょっとだけミステリィ風に?

中学1年のころ、暑い夏の日のことだったと思う。
授業中に先生が、教室の後ろの片隅に転がっていた、パンを発見した。
パン、それは、その日、給食に出てきたもので、
給食の前に配られる薄い紙ナフキンで、包まれていた。

「誰だ、ここにパンを、置いたのは?」
先生が、必要以上にキツくいったので、
誰も名乗りをあげなかった。

先生も、収まりがつかなくなったのだろう。
「持ち主がでてくるまで、授業はしない。」
と理不尽なことをいった。

沈黙が続くが、誰も名乗りを上げることは無く、
先生は、職員室にひきあげていった。

教室は、にぎやかになった。
授業が無くなって、喜んで、ふざけている子もいたが、
大部分が「どうしよう?」という感じだった。

好意的に解釈すれば、
先生は、生徒による自主的な解決を望んでいたのだろう。
生徒だけになり、しきいは低くなったが、
自分のパンだ、と名乗る子はでてこなかった。

先生が見つけたパンは、教室の後ろの床に紙に包まれて転がっていた。
教室の後ろは、壁に黒板があり、その下は、カバンをいれる棚となっていた。
きっと、棚にいれたカバンから、転がり落ちたのだろうと推測された。

そして、当時は学校での躾が厳しく、
給食は完食するように指導されており、
パンを残して、家に持って帰ること自体が、禁止されていた。
こんなことも、名乗り難い原因だったんだろう。

いっそうのこと、パンが消滅すればいいのにと、ぼくは思った。
誰も傷つくことなく、パンが無くなれば、
先生も、怒る理由が無くなるに違いない。
その時、ぼくの頭に、あるアイデアがひらめいた。

ぼくは、仲の良い友達に、その考えを話した。
友達は、「面白い!」と、周りの子にも説明した。
クラスの皆もその話にのってくれたので、
パンを消滅させるための、壮大な(?)実験が行われることとなった。

ぼくらの教室の隣は、空き部屋だった。
ぼくと友達は、紙ナフキンで包んだパンを持って、
その人気が無い隣の教室に入り、
黒板の前の教卓の上に、パンを置いた。
そして、その上に、ブリキのバケツをかぶせて、中が見えないようにした。

「準備ができたよ」と、クラスに戻って合図をした。
待ち構えていたクラスメイトは、出席番号順に一人づつ、
カバンをもって、隣の部屋に入っていく。

ルールはこうだ。
☆自分のパンの人は、バケツからパンを取り出し、自分のカバンにいれて、
 また、バケツを元に戻しておく。

☆自分のパンでない人は、そのまま、戻ってくる。
 ただし、絶対に、バケツの中は覗いてはいけない。

最後のクラスメイトが戻ってきたら、バケツを片付けに戻る。
その時には、パンは消滅しているはずだ。

お化け屋敷に入るように、
一人ずつ、びくびくしながら、隣の教室に行っては帰還してくる。
ぼくは、ワクワクしながら、自分の番を待っていた。

10人ぐらいが終わった時だろうか、
この作戦は、突然の破綻をきたす。
先生が戻ってきたのだ。「何をやっているのだ!」

立案者のぼくは、パンの消滅計画についての説明を行った。
しかしながら、当然ではあるが、先生のお気には召さなかったようだ。
「そんな事は止めなさい。」
先生は、隣の教室に入り、バケツを片付け、教室に戻ってきた。

「パンの持ち主は、後から職員室に来るように。」
と先生はパンを自分の教科書の横に置き、
授業が再開された。

誰かその後、職員室に行ったのか、ぼくは知らない。
だから、パンの行方は知らないままだ。

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すべてで森となる(Inside to outside) [小話]

僕はミステリィなるものを読む習慣が無かったので、
森博嗣さんの読者となって、まだ1ヶ月ぐらいだけど、
スカイ・クローラ・シリーズ5冊と、短編2冊と、水柿先生のを2冊目迄と、
『すべてがFになる』と、を読んだ。とても面白く引き続き、
長編を読んでいこうと思う。
(ちなみに瀬名秀明さんの『デカルトの密室』をその後に読んだら、
何か話がシンクロしているように感じられた。)

さて、森さんの本を読んでいたら、
僕も日常で体験した、ミステリィチックな出来事を
ちょっと書きたくなった。全くたいした話ではないけれど。
(と書くことで謙遜している訳ではなく文字通りの意味です。)

学生の時のことである。
研究室の先生から、「報告書の差し替えを行うから、ゼミの部室に集まるように」
と、指示があった。
ぼくら学生5名は、仕方がないなぁと、ゼミ部屋に集まった。

ゼミ部屋には、並行に長机が5列並べてありには、
各々の机には、1000頁級のぶあつい報告書が、10冊づつ
ニュータウンを空から眺めたように、整然と並んでいた。

「差し替え頁は、20枚づつ。頁番号を確かめて、差し替えて欲しい。
各机で、一人10冊だ。」
生徒が各机に移動すると、先生は、皆に差し替え用の頁
20枚の紙を10セットづつを入れ子に積んだ束を、数を確認しながら配った。

「抜き取った古い頁は、床に捨てて、後で、20×10=200枚あることを
各自確認して欲しい。」と先生は言った。

差し替える頁は、報告書の中でかたまっておらず、
ばらばらの場所のため、最初は、要領がつかめず、手間取ったが、
なれてくると、手の感覚で差し替える場所が大体分かるようになり、
スピードアップした。
こうした、単純作業のコツをつかむのが割りと得意な僕は、
結構集中して、さっさと終わらせた。
自分の床に散らかった差し替え済みの頁を集めて、
先生に言われた様に、数を数えたら丁度200枚だった。
完了! 僕は、皆が終わるまで一休みしていた。

前の机のSさんも差し替えが終わり、床に落ちた紙を束ねて数え始めた。
「あれぇ、1枚足りない。」
Sさんは、もう一度数えたが、やっぱり1枚足りないようだった。

他の机の下に1枚まぎれたのかも知れない。
そして、他の3人が終わるのを待ったが、他の3人もぴったり
200枚だった。

1枚は、どこに消えたのか?
他の学生が、
「抜き忘れがないか、10冊の差し替え場所を確認するしかないだろう」と言った。
(それなら、差し替えた199枚の紙から足りない紙を調べて、
10冊のその頁を探した方が少し早いかな)

Sさんは、踏ん切りわるそうに「ちゃんと抜いたと思うんだけど」
と恨めしそうに、床を眺めて言った。

普段から、僕は、無くし物をした時は、
そのありかは、頭の中にあると考えている。
その時、僕は、ふとひらめいた。

僕は、Sさんにいった。
「だめもとでいいんだけど、ちょっと、
10冊の最後のページを確認してもらえる?」

Sさんは、どういうことだか、ピンとこなかった様だけど、
横にならんだ、差し替え済みの10冊の報告書を、順番に持ち上げて、
最後のページを見て言った。
「あぁ!あった!」
途中の1冊の一番下に、最終頁では無い頁、すなわち探していた紙が、くっついていた。

「えぇ、どうして、わかったの??」とSさんは、僕に言った。
僕は、探偵のようには上手く説明できなかったので、
「木を隠すなら森に隠せって、言うじゃない」と適当にごまかした。

どうしてそうなったかは、言葉をつくせば、
きっと論理的に説明ができるのであろうけど、
それには興味はない。

ひょっとしたら、一休みしている時に、
無意識でSさんの作業の段取りを観察していたのかも知れない。
と考えることもできる。

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