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鶏の夢 [小話]

鶏.jpg
鶏の夢

一昨日見た夢は、久しぶりにエンターティメント性が高いものであった。
夢の中に、現実に存在する人がでてきますが、
当然のことですが、面識はありません。
夢の中のこと(人物、組織、作品)は、
現実のこととは無関係であることを、最初にお断りしておきます。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
クラウスは、有名なアニメーション・スタジオにいた。
大御所監督のアニメーション映画が作られるのを見学していた。

明暗がはっきりした絵柄で、郷愁を誘う風景が描かれていたが、
あの世の世界が色濃く映し出されていた。

そこへ、スズキ・プロデューサーがやってきて、
「クラウス君、ちょっと」と、机に手招きした。

いやな予感がするなぁと、
クラウスが椅子に座ると、開口一番切り出した。
「きみ、次の作品の監督をしてくれる?」
あっけにとられたクラウスが、
「ぼくは、素人ですよ!」と言うと、
「君は絵がかけるから、映画もつくれるよ。」
と、スズキ・プロデューサーは、いかにも簡単なことの様に言った。
そして、
「鶏を題材に作って。いいね。」と、
クラウスに言い渡した。

クラウスは、泣く泣く、
大御所監督の絵コンテを片手に、
大部屋の片隅で、ノートに作品の企画書を書き始めた。
鶏のスケッチを書いては、そのキャラクターが動き出すのを期待した。
鶏は、動いてはくれなかったが、
やがて、表情を浮かべて、
鶏が住む世界について語り始めた。
クラウスは、忘れないように、
急いでそれをノートに書きとめていった。

気がつくと、部屋の中はガランとしていた。
スズキ・プロデューサーがやってきて、
「一緒に帰ろう」といった。
部屋には、もう一人だけ監督が残っていた。
スズキ・プロデューサーは、監督にに一緒に帰ろうと誘い、
部屋の電気を消した。

クラウスは、スズキ・プロデューサーと、尊敬する監督と
三人で道を歩いていた。
道端に、古びたビルが建っていた。
ビルの根元の地面は、大きくくぼみ、鉄骨が地中深くまで、
むき出しになっていた。

尊敬する監督は、かがんで、ビルの根元を覗き見た。
クラウスも真似をして、ビルの根元を見ると、水がたまっていた。
水の中を魚が小さな群れをなして泳いでいた。

クラウスは、その光景も面白かったが、
それにもまして、隣で一心不乱に、鋭い眼光でその光景を眺める
監督の姿に圧倒された。
この監督は、こうした風景が本当に大好きなのである。

二人の横にやってきたスズキ・プロデューサーに、
クラウスは軽い話でもしようと、子供時代の思い出話を始めた。
「ぼくは、子供のころ、空き地で、秘密基地を作ったものです。
ある日、基地を作るために、棒で地面にぐるっと環を描きました。
すると、環の中に水が湧き出したのです。
大地は、水の上に浮いているのかなぁと、その時思いました。」

その時のスズキ・プロデューサーの反応は、
全くクラウスが予期していないものであった。
「君には、がっかりした。
 帰ろうと誘ったのは、そんな話を聞くためではない。
 企画はどうなっているんだ。何故、企画の話を一言もしないんだ!」

あわてたクラウス。
「企画は出来ています。説明するには、
 落ち着いて話ができる場所がいります。」
と、とっさに答えた。

「よし、この先に、監督の家がある。そこで話を聞こう。」
監督の家まで、三人は無言で歩いた。
昔友達とよく遊んだ様な、平屋の庶民的な家についた。
元気の良い、お婆さんがいて、
「おや、早いお帰りだね。」と出迎えた。
子供たちが、家の中を駆け回って遊んでいた。
何だか、スタジオで見た監督の作品の一コマのようだった。

「この部屋で打ち合わせるから、入ってこないでね。」
と、スズキ・プロデューサーは家の人たちに伝えた。
いよいよ、その時がきた。
クラウスは、ちゃぶ台をはさんで、
スズキ・プロデューサーと監督と向き合った。

クラウスは、ノートを取り出し、表紙をめくる。
書いていた時の充実感は覚えているのだが、
正直内容は忘れかけていた。まぁ、中を見れば思い出すだろう。
しかし、そこには、
クラウスの見覚えの無い言葉が書かれていた。

「大きな人、心、国」

はぁ? という感じだった。
これは、まずいんじゃないか、直感的にクラウスは思った。
このスタジオは、小さなコミュニティである。
大きな組織というものとは、対極にある。
大きな国をテーマにすることはできない。
それに、鶏は、どうしたんだ?

しかし、心とは別に、クラウスは、雄弁に語っていた。
「ジョージ・オーウェルの「動物農場」を
現在の視点で作り直したいのです。
鶏が主人公です。ソ連崩壊後の社会、
金融工学による資本主義経済の繁栄と崩壊、
個人主義と全体主義。国とは何か?
鶏は、その流れを見つめ、
新しい夜明けを告げるのです。」

雄弁に語りながら、
クラウスは、言葉が、心を離れて、
勝手に宙で踊っているのが判っていた。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

ここで夢が覚めました。
普段、心の中で抑圧しているものが、
夢の中では噴出するのでしょうか。

スズキ・プロデューサーのポッドキャストを、
よく聴いていたため、こんな夢を見たのかもしれません。
夢の中のスズキ・プロデューサーは怖かった。(笑)
そういえば、高畑監督が、月から帰って来たかぐや姫を
題材に映画を作っているそうです。楽しみです。

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アヨアン・イゴカー

Animal Farmですか。鶏による映画化ですか、面白そうですね。
大学時代に英語を勉強するために読みました。
ALL ANIMALS ARE EQUAL
BUT SOME ANIMALS ARE MORE
EQUAL THAN OTHERS
見事な言葉の矛盾で、世界の矛盾を要約していると思います。
by アヨアン・イゴカー (2009-08-30 01:51) 

miron

☆アヨアンイゴカー様、おはようございます。
動物農場(Animal Farm)は、未読です。
昔、長編アニメーションとして映画化されたものが、
今年始め、スタジオジブリから公開されて、DVDになっています。
http://www.ghibli-museum.jp/animal/
未見ですが、予告編からも、作品の迫力が伝わってきます。
機会があれば、読むか見ようと思います。

ALL ANIMALS ARE EQUAL
BUT SOME ANIMALS ARE MORE
EQUAL THAN OTHERS

という言葉は痛烈ですね。
by miron (2009-08-30 06:08) 

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