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すべてで森となる(Inside to outside) [小話]

僕はミステリィなるものを読む習慣が無かったので、
森博嗣さんの読者となって、まだ1ヶ月ぐらいだけど、
スカイ・クローラ・シリーズ5冊と、短編2冊と、水柿先生のを2冊目迄と、
『すべてがFになる』と、を読んだ。とても面白く引き続き、
長編を読んでいこうと思う。
(ちなみに瀬名秀明さんの『デカルトの密室』をその後に読んだら、
何か話がシンクロしているように感じられた。)

さて、森さんの本を読んでいたら、
僕も日常で体験した、ミステリィチックな出来事を
ちょっと書きたくなった。全くたいした話ではないけれど。
(と書くことで謙遜している訳ではなく文字通りの意味です。)

学生の時のことである。
研究室の先生から、「報告書の差し替えを行うから、ゼミの部室に集まるように」
と、指示があった。
ぼくら学生5名は、仕方がないなぁと、ゼミ部屋に集まった。

ゼミ部屋には、並行に長机が5列並べてありには、
各々の机には、1000頁級のぶあつい報告書が、10冊づつ
ニュータウンを空から眺めたように、整然と並んでいた。

「差し替え頁は、20枚づつ。頁番号を確かめて、差し替えて欲しい。
各机で、一人10冊だ。」
生徒が各机に移動すると、先生は、皆に差し替え用の頁
20枚の紙を10セットづつを入れ子に積んだ束を、数を確認しながら配った。

「抜き取った古い頁は、床に捨てて、後で、20×10=200枚あることを
各自確認して欲しい。」と先生は言った。

差し替える頁は、報告書の中でかたまっておらず、
ばらばらの場所のため、最初は、要領がつかめず、手間取ったが、
なれてくると、手の感覚で差し替える場所が大体分かるようになり、
スピードアップした。
こうした、単純作業のコツをつかむのが割りと得意な僕は、
結構集中して、さっさと終わらせた。
自分の床に散らかった差し替え済みの頁を集めて、
先生に言われた様に、数を数えたら丁度200枚だった。
完了! 僕は、皆が終わるまで一休みしていた。

前の机のSさんも差し替えが終わり、床に落ちた紙を束ねて数え始めた。
「あれぇ、1枚足りない。」
Sさんは、もう一度数えたが、やっぱり1枚足りないようだった。

他の机の下に1枚まぎれたのかも知れない。
そして、他の3人が終わるのを待ったが、他の3人もぴったり
200枚だった。

1枚は、どこに消えたのか?
他の学生が、
「抜き忘れがないか、10冊の差し替え場所を確認するしかないだろう」と言った。
(それなら、差し替えた199枚の紙から足りない紙を調べて、
10冊のその頁を探した方が少し早いかな)

Sさんは、踏ん切りわるそうに「ちゃんと抜いたと思うんだけど」
と恨めしそうに、床を眺めて言った。

普段から、僕は、無くし物をした時は、
そのありかは、頭の中にあると考えている。
その時、僕は、ふとひらめいた。

僕は、Sさんにいった。
「だめもとでいいんだけど、ちょっと、
10冊の最後のページを確認してもらえる?」

Sさんは、どういうことだか、ピンとこなかった様だけど、
横にならんだ、差し替え済みの10冊の報告書を、順番に持ち上げて、
最後のページを見て言った。
「あぁ!あった!」
途中の1冊の一番下に、最終頁では無い頁、すなわち探していた紙が、くっついていた。

「えぇ、どうして、わかったの??」とSさんは、僕に言った。
僕は、探偵のようには上手く説明できなかったので、
「木を隠すなら森に隠せって、言うじゃない」と適当にごまかした。

どうしてそうなったかは、言葉をつくせば、
きっと論理的に説明ができるのであろうけど、
それには興味はない。

ひょっとしたら、一休みしている時に、
無意識でSさんの作業の段取りを観察していたのかも知れない。
と考えることもできる。

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コメント 4

Mercedes

mironさま凄いですね!
学生の皆さんが 『おぉ~凄いっ!』 と驚きながら笑っている風景が
見えます。
>普段から、僕は、無くし物をした時は、
 そのありかは、頭の中にあると考えている。
次に物を無くした時、始めに頭の中を探してみます!
(私の場合は・・・そにも無い確率が高い気がしますが・・・。
by Mercedes (2008-06-23 00:04) 

miron

☆Mercedesさんに褒めて頂き嬉しいです。
(僕の記憶の中で、探すのもむずかしくなった、
数少ない輝かしき記録の一頁です。)
物を無くした時は、一度冷静になって、
最後に見た時や、使った場面などを、順に思い浮かべると、
あぁ、あそこかなぁと、思い出すことが多いので、
まずは、頭の中を探すといいですよ。
(意外と無意識でも頭の中には残っているものです。)
勿論、思いもかけない場所から見つかることも多いですが。
どうしてこの場所から?という時は、本当にミステリィです。。

by miron (2008-06-23 15:19) 

sknys

mironさん、こんばんは。
本人は忘れたつもりでも脳内記憶として保存されているわけですね。
『クレィドゥ・ザ・スカイ』に記憶についての会話がありました。

「肉体的な変化がなくなると、同じルーチンに対して、無意識に処理をしようとする。躰の動きが合理化されていく、といっても良いわね。だから、処理経路が短絡して、記憶に残らない。考えずに動いているから、情報を覚えない。‥‥」

4巻目までの「僕」には整合性があったのに
『クレィドゥ‥‥』で、ちゃぶ台を引っくり返されちゃった^^;
もしクサナギ=カンナミ(?)だとすると、
草薙水素が少なくとも2人存在することになる。
http://oshiete1.goo.ne.jp/qa3959955.html

「僕」たちの言述は全く信用出来ない。
新聞記者のソマナカが客観的な事実を語っているのかな?
『スカイ・クロラ』を再読しなくちゃ^^
by sknys (2008-06-28 20:18) 

miron

☆sknysさん、おはようございます。
このシリーズは、どんな順番で読んでも良いみたいなことを読んだ記憶があったので、僕は、図書館に残っていた順に借りたら、ダウンからの逆順になりましたが、それでも楽しく読めました。夢の中にいるようで、誰が誰なのか、良くわからなくなり、原型が同じ記憶が、形を変えては、何度も浮かんでくる感じが面白かったです。

映画『アラビアのローレンス』は、冒頭で主人公ローレンスが、バイク事故で死に、お葬式に多くの人が来ます。
その後、アラビアに赴任してからの話が始まり、
アラビアであった人に、どこかで会わなかったか?と聞かれます。
初めてです。というような会話だったが、
実は、最初のお葬式に、その人は出ている。
最後に、アラビアの砂漠を、バイクが走っていき、冒頭につながる感じで、映画は終わる。この映画も、僕の中で永遠の循環構造の中にあります。

このシリーズの推進力である『スカイ・クロラ』は、プロペラで、
このシリーズの最後に置かれたことで、プッシャーとなっているのかな?
sknys synksで『スカイ・クロラ』について書かれるのをお待ちしています。

by miron (2008-06-29 06:16) 

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